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2012年3月29日 (木)

「千世と与一郎の関ヶ原」

★★★☆☆。
 う~む、さてさて。佐藤雅美の市井捕物シリーズはまあまあなんだけど、こういう歴史物は今ひとつなんだよな。悪いというのではない、読み手がそれについていけないということなんだろうけど。
 千世と与一郎というのは、細川忠興の嫡男忠隆と内儀千世。この話は同じ著者が「戦国女人抄おんなのみち」の中の“新婚夫婦を翻弄した家康の苛酷な命”という章に書いている。それをふくらませて関ヶ原の戦い前後の史実を交えて長篇化したのが本作。
 まあ忠隆と千世の世過ぎの仕方には何も言うまい。戦国の世にはあるまじき未練なという見方もあるだろうけれど、生き方は人それぞれ、他人がとやかくいうことはない。細川ガラシャこと玉の生きざまは立派だけど、それが当たり前といえるほど人間は強くないし、現代からみて逃げた千世、逃がした忠隆をどうこう言うのはどうかと思う。
 それはともかく、関ヶ原前後の緊迫するやりとりが本作の主題ではある。そこを綿密に読み込めばおもしろいのだろうとは思う。だけど、誰それの軍勢がどこそこに何万、かなたの誰かの手勢があそこに何千ありそれがどう動いて、というのをきちんと把握して読み進むというのがぼくにはできない。本作全体の人間ドラマにそれは瑣末事のように思えて読み飛ばしてしまうからだ。著者はそういうところこそ力を入れて従来の諸説を勘案しながら独自の解釈を加えて書きこんでいるのだから、それを飛ばしては申し訳ないというか読む意味が減じるのだろうけれど、そこまでメモしたり記憶したりしながら緻密に読む気にはなれないんだよな。
 というわけでこんな低い評価になってしまった著者には申し訳ない。だけどこれを司馬遼太郎が書いたら、いかにも人間くさいドラマで一気に読ませる作品になって★5個がつくのも事実。作品の巧拙ではなく、軸足をどこに置くかという違いなんだろうか。

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