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2012年4月 2日 (月)

「川の深さは」

★★★★★。
 先週の学会出張の飛行機で半泣きになったのがこれ。この著者は初めて読んだ。そういえば出世作の「亡国のイージス」というのは聞いたことがある。文庫カバー裏によればその作者の「出版界の話題を独占した必涙の処女作」なのだそうだ。まさに必涙はそのとおりだった。熱い、熱すぎる。涙が止まらない。
 この作品について知りたかったら、ぼくなどが千万言を費やすよりも、文庫巻末の豊崎由美の解説を読むべきだろう。この小説の熱さが間然するところなく書き切られている。立ち読みでもいい、ぜひ読んでほしい。絶対に本文を読みたくなること請け合いだ。「彼女を守る。それが、おれの任務だ」。「保と桃山が死にものぐるいで伝えてくれる人としての矜持、優しさ、痛み、怒り、大切な人に注ぐ無尽蔵の愛と情熱こそが、この小説をありていの冒険小説から人間ドラマへと昇華させている」。
 もう何もつけ加えることはない。人が人として生きるためにもっとも大切な何か。それを強烈に問いかけてくる。そう、これはまるで藤原伊織の世界ではないか。似ていると思う。藤原伊織が死んでもうあの熱い人間のドラマが読めなくなったと嘆いていたら、どっこい福井晴敏がいたという幸せ。
 「あなたの目の前に川が流れています。深さはどれくらいあるでしょう? 1.足首まで、2.膝まで、3.腰まで、4.肩まで」。まるで昼メロみたいな作品のタイトルは結構意味深で、この心理テストからきている。ちなみにぼくは4の肩までを選んだ。なるほど、作品世界に肩までどっぷり漬かってしまう資格十分というわけだ。
 防衛庁、米CIA、北朝鮮、それらがからむ国際問題、テロ、諜報戦、そしてミサイルや兵器での戦争もどきのアクション、と主題になっているのは国家の存立と国防問題で、そのSF的ストーリーもそれはそれでおもしろいし、最後の銃撃戦シーンはすごい迫力だけど、それよりも大組織に立ち向かうちっぽけな人間の生き方が圧倒的に胸を打つ。桃山、保、葵、3人で海を見にいくという約束が果たせなかった。その結末がたとえようもなく悲しい。

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 今日のランニング。5.2 km/32 min。今月の累計距離 25.2 km。

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