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2012年4月20日 (金)

「ラットマン」

★★★★★。
 むうん、才能あるねこの人、ほんと。今まで読んだのは3冊でこれが4冊目なんだけど、いずれも平均以上。というかだんだんよくなる。ラットマンていったい何だろう?ねずみ男か、まさかね。ロールシャッハテスト、そうあれだ。同じ絵が見方によってネズミにも見え、男の顔にも見える。つまり、同じ事件が見る人によってがらりと様相が変わって見える、というまさに現代版「薮の中」。
 主人公の姫川亮は学生時代の仲間たちとバンドを組んで活動している。その練習場で起こった事故死を装った殺人事件。物語は終始姫川の視点で進んでゆき、事件の捜査や友人たちの推理に対しての反応や感想がつづられてゆく。そこに加わる姫川の子供の頃の姉の死亡事件のフラッシュバック。いずれも一見単純なできごとでミステリ性は低く、まるでバンド仲間たちとのやりとりが主題の遅れてきた青春小説のように錯覚するほどだ。だが、もちろんこの作者のことだからそれで終わるはずがない。最後にあっと驚く転回また転回が待ち受けている。まさに「薮の中」。叙述トリックの真髄というか、その本人ですらだまされていたのだからかなわない。
 それはともかく、そういうトリックなしに読んでも十分読み応えがあると思う。全体としてよくできたミステリであるのは間違いないのだけれど、それだけに終わっていない。バンド仲間のやりとりだけ取り出しても作品としてちゃんと成り立っている。うまく言えないけれど、直木賞ではなくて芥川賞でもおかしくない、というような感じ。ミステリのためのミステリではなくて、ちゃんとした文学になっているというか。才能だよね。

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