« 6年ぶりなるか | トップページ | ロスタイム »

2012年5月19日 (土)

「舟を編む」

★★★★★。
 2012年本屋大賞第一位という触れ込みで満を持して読んだわりには...、ということで満点はちょっとおまけかな。悪くはない。おもしろいしそこそこ感動的だと思う。だけど残念ながらもうひとつ突き抜けるものがない。あの寛政大学箱根駅伝挑戦のような夢のような熱さがない。そこが惜しい。
 ぼくは辞書好きでこの部屋の中にも数えれば20冊以上は辞書辞典の類いがある。国語辞典を読むのも好きだ。なので「辞書は、言葉の海を渡る舟だ」、「ひとは辞書という舟に乗り、暗い海面に浮かびあがる小さな光を集める。もっともふさわしい言葉で、正確に、思いをだれかに届けるために」、「海を渡るにふさわしい舟を編む」、その思いを込めて名づけられた『大渡海』という辞書、このイントロにはぐっとくる。開巻30ページ足らずですでに感動した。だけどそこからの盛り上がりが今ひとつなんだよな。
 一言でいえば、軽い。本作のそれが特徴だろう。そしてそこが評価の分かれるところかもしれない。深刻なものより軽いのが受ける時代なんだろうし、すらすらと読めてそれなりに山も谷もあるし、ああおもしろかったと読み終われる。小説なんてそれでいいんだよ、と思えばその通りだと思う。なのにぐずぐずと文句を言ってるのは、「風が強く吹いている」、「辞書」、「本屋大賞」というイメージに引っぱられたぼくの過剰な思い入れのせいであって、この作品の責任ではないのだろう。
 紺地に銀押しの地味な装丁。玄の字を入れた帆を張った舟が海を行く。これが作中の『大渡海』を模したものなのは明らか。そしてそのイメージをぶち壊すかのように巻かれた劇画調の帯。この作品のはらむ魅力と不足点を象徴的に表している、と思わない?

Img_3461

« 6年ぶりなるか | トップページ | ロスタイム »

無料ブログはココログ