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2012年11月19日 (月)

「ユージニア」

★★★★☆。
 「ドミノ」の次はと考えて手に取ったのがこれ。不思議な本だった。恐るべきミスリードがひとつ。カバー裏のあらすじの末尾にある「日本推理作家協会賞受賞の傑作ミステリー!!」の文言。書いた人が本気でそう思っているとしたら信じられないし、売れさえすればいいという単なる惹句なら最低だ。傑作という見方には必ずしも反対しないけれど、断じて傑作ミステリーではないよ。日本推理作家協会がどういう評価で授賞したのか知らないけれど、受賞したということがこの作品にとっては不幸なレッテルになってしまったのではという感が拭えない。
 金沢市とおぼしき古都の旧家で起こる大量毒殺事件。犯行を自白した実行犯の自殺で幕を閉じられたものの、果たして真相はそれで正しいのだろうか。事件当時少女だった関係者が、大学生となってから卒論研究という名目で事件関係者への綿密な聞き取り調査を行って本にまとめる。その前後のようすを、数少ない関係者のモノローグでつないでゆくという趣向になっている。
 実行犯はともかく、犯行を教唆した人物が裏にいる、それははたして誰か...。となると犯人探しのミステリなのだけど、関係者はほとんど死んでしまっていて、残る人は他にいない。だけど物的証拠がほとんどない。結局、明快な解答が与えられないまま物語りは静かに閉じられる。それでいいのだろう。これはミステリーじゃないのだから。ユージニアという謎の言葉、青い部屋に白い花という叙述トリック。ミステリアスな舞台装置はあるけれど、それが謎解きの鍵になっているわけではない。ファンタジーという分類の方が適切なような。というわけで好悪が分かれる作品になっている。ぼくは嫌いじゃない。

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 今日のランニング。7.5 km/50 min。今月の累計距離 90.3 km。

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