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2012年11月12日 (月)

「ソロモンの偽証」

★★★★★。
 久々の力作、大長編。いつのまにこんな大作を書いていたのだろうか。といってもぼくが知らなかっただけで、小説新潮に2002年から2011年まで10年にも渡って連載されていたものだ。10年がかりと知るとさらにそのすごさに感心するばかり。ただものではないとは重々知っていたけれど、この力量たるやまさに向かうところ敵なし。そんじょそこらの名ばかりミステリ作家など比ぶべくもない。
 中学生たちが主人公。クリスマスイブの雪の夜に校舎の屋上から転落死した男子生徒。事故か事件か。周囲の状況から事件性はなく自殺だということで幕を引きかけた学校と警察に対して匿名告発状が届き、それをマスコミが大々的に取り上げたことから事態は急転。はたして真相はいかに。大人たちの建前論とは別に自分たちの手で真相を明らかにしたいという中学生たちが、課外活動という名のもとで模擬裁判を立ち上げる
 これが中学生のすることか。現実味がない。という反論もあるだろう。確かにそう思うけど、これが高校生ならどうかというとやはりしっくりこない気がする。やはり小説としては中学生で妥協するしかないんだろう。検事役の藤野涼子の優等生家族、被告の大出俊次のいかにもな父子、はては弁護人神原和彦、判事井上康夫から廷吏山崎晋吾まで、あまりにもキャラ立ち過ぎて不自然なくらいの配役。リアリズム信奉者にはわざとらしく出来すぎに思えるだろう。が、全作品を読んでいる熱烈信者にとってみればそこらあたりも含めて宮部みゆきなんだよなと思う。少年少女を書かせたら本当にうまい。20人から登場するそれぞれ重要な中学生キャストを見事に書き分けているのはもちろん、ヒラ刑事とか電器屋の親父とか美術教師とかの脇役までしっかり血が通っている。
 何より、瑣末なエピソードはいろいろあるにせよ、たったひとつの飛び降り死事件だけを主題にこれだけの大長編を間然するところなく維持してゆく構想力、文章力。すごいと思う。そしてクライマックスの最終証人の独白と傍聴席からの突然の反論。その思いの力強さに胸がふさがる思いがする。真実が本当に人を救うのか、が問われている。なぜ著者がこのタイトルをつけたのかが腑に落ちる。途中で結論がわかってしまうのが難点などという声もあるけれど、犯人がわかってしまったらミステリはつまらないという狭量さではとうてい本作の価値は計れないだろう。

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 今日のランニング。6.4 km/43 min。今月の累計距離 58.5 km。

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